小説1
突然ですが、なんだか小説が書きたくなってしまったヌカボシです
不定期に(と言いつつも1週間に1度はちゃんと)続きを書いていこうと思います
まだ先が決まってないので、
ちょっとどうなるかわかりませんが
(衝動的ですが)書いてみますね
ああ、タイトルまだ決まってないので決まり次第書きますね
今は一応無題ということで。
「ああ、しまった。煮すぎた。」
ボコボコと沸騰する音が苛立ちを加速させる。せっかく半熟卵を作ろうと思ったのにこれではゆで卵だ。
6分30秒。
それはわかっている。わかっているのに何か他ごとをやっていると時間が過ぎている。今日もそう。本を読んでいたら時間が過ぎていた。
時間を測ればいい。それもわかっている。わかっているのに、数分してから時間を測り忘れていたことに気づく。
もうなんとも言い難い感情に見舞われながらゆで卵をまな板にのせて半分に切る。そして再びショックを受けながら、そのカスカスになった卵を即席ラーメンにのせる。
ああ、今週は散々だ。
月曜日から自転車のサドルに鳥の糞。慌てて家からウエットティッシュを探して拭いて、家に戻ってゴミを捨て忘れていたことに気づいて、急いでゴミを捨てに行く。
そんな風に始まった今週だから、気分も上がるわけがなく、今日は週末日曜日。 来週はきっと幸せな週であることを願いつつ、まったりとこの休みを過ごしている。
そうして再び目に入ったゆで卵を眺めて、小さなため息が漏れる。それでもお腹は空くのでラーメンの汁をゆで卵に染み込ませて、麺をすする。汁が染みて、思ったよりパサパサではなかったゆで卵を食べて案外悪くないなと思う。それから、ごちそうさまをする。
昼寝でもするか。
まあその前に食器を片付けようと立つと、いつもの声がきこえた。
「ただいま。」
「あら、おかえり。」
出かけていた市椛(いちか)が帰って来た。
「今日はちょっと荷物付き。」
「荷物って、名前で呼べよ。」
市椛の後ろにいる人は笑いながら突っ込む。
少し怒っているのだろうが、全然怒っているように感じさせないそのおっとりとした雰囲気。その雰囲気が行動、言動に滲み出てしまう。周りにいる人はもうなんというか、なぜか世の中のしがらみを忘れて幸せを感じる。
そんな彼の声を久しぶりにきいた。
「ごめんね、突然。この人はじめましてだよね、紹介するね。えっと、お荷物のそうちゃんね。」
やっぱり、日畑(ひばた)くん。目が合い気づく。きっと日畑くんも気づいている。
ここで2つの選択肢が用意された。
市椛に『あのね、知り合いなの』と言って日畑くんに『久しぶり』と言うか、『はじめまして、皐(さつき)です』と言うか。
正直に生きるなら明らかに前者を選ぶべきだが、今の二人の関係を見るとこの親しい感じを私が壊したくないとも思う。きっと久しぶりといえば、過去のことを話す必要が出てきて複雑になる。
私は今のこの穏やかな生活のままゆったりと人生を過ごしたい。今週のような多少の不運があろうとも、それらを受け入れながらつつましく暮らしたい。今週を私の人生において散々な始まりの週にしたくない。
日畑くんは目を見開いて何か言おうとしているが、その驚きからきっと言葉が出てこない状態。市椛は何も気づいていない。
だって、それは一瞬の出来事なのだから。
「はじめまして、皐です。」